亡くなった方の葬儀や火葬、施設の撤去、遺品整理、役所への事務手続きなどを生前に契約しておくという内容の死後事務委任契約。
最近では、おひとり様の方や身内が遠方に住んでいたり、親族と疎遠になってしまっている方から死後事務委任についてのご相談が増えています。
今回は、死後事務委任契約の内容の一つである、死亡届の提出というテーマについてです。
死後事務委任契約を締結したのはいいけれど・・・
人が亡くなったときに、最初に行う役所への事務手続き。それが死亡届の提出です。
死後事務委任契約の受任者として、一番最初に行うのも、この死亡届の提出というのが一般的です。
しかし、死後事務委任契約の受任者は、以下の者に該当しなければ死亡届の「届出人」として、書類を提出することはできません。
- 同居の親族
- その他の同居者
- 家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人
- 同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人、
任意後見人、任意後見受任者
(*戸籍法87条)
全く赤の他人である受任者は、死亡届が提出できない!?
これじゃあ死後事務委任契約でお願いしても、私の死亡届は提出してもらえないじゃないか!
そうなのです!
このままだと死後事務委任契約を結んでも、受任者が全くの他人であれば、委任者の死亡届を提出することはできないのです。
受任者としては、亡くなった方の親族を見つけ出して死亡届を記入してもらう必要が出てきます。
身内の方が一人もいない場合は、建物の大家さんや病院の院長などに依頼して、「家主」あるいは「管理人」として記入してもらうことになるでしょう。
もちろん、受任者としては、死亡届を「使者」として提出することはできます。
たとえば、病院の院長に死亡届の届出人として記入してもらった後、院長の「使者」として役所に死亡届を提出する、という流れです。
「身内に自分の死亡の事実を知られたくない。」
「周りの人の迷惑を掛けずにひっそりと逝きたい」
そう思われている方にとっては、死亡届という一つの手続だけで、身内や周囲の人にお手間を掛けてしまうことになります。
賃借中のマンションやアパートで亡くなった場合は、死亡届の届出人に快く応じてくれる家主の方は少ないですし、管理者もいない自宅での死亡の場合は、届出人を探すだけでも一苦労ということもあるでしょう。
「死後事務委任契約を締結したから、もう死んだあとのことは全部大丈夫だ!」というわけにはいかない。
これが死後事務委任契約の「落とし穴」の一つでもあるのです。
身内がいない人は任意後見契約もセットで締結しておこう!
上記のような弊害を避けるためにも、親族もいない、頼りになれる人がいない、おひとり様の場合は、任意後見契約と死後事務委任契約をセットで締結しておくことをおすすめします。
令和2年5月1日施行の「戸籍法の一部を改正する法律」において、死亡届の「届出人」となれる者に「任意後見受任者」が追加されました。
これにより、任意後見契約を締結しておけば、受任者が単独で死亡届を提出することが可能となり、従来よりスムーズに事務処理を遂行できるようになったのです。
身寄りのないおひとり様の場合ですと、任意後見人が付けば、高齢になったときの認知症対策にもなります。
任意後見契約は、判断能力が衰えた場合に備えての「一種の保険」みたいなものなので、亡くなるまでの間に認知症などにならなければ、契約の効力も発効することもなく、毎月の費用も発生しません。
身寄りの方が全くなく、在宅で最期を迎えたいとお考えであれば、ぜひ任意後見契約の締結も合わせて検討してみてはいかがでしょうか?
まとめ
死亡届の提出は、届出義務者が、死亡の事実を知った日から7日以内にしなければならない、とされています(戸籍法86条)。
死後事務委任の受任者に死亡届の届出人資格がなければ、死亡届を提出するまで多少の手間が掛かる可能性があります。
死亡後の手続をスムーズに進めていくためにも、死亡届の届出人、という資格が誰であるのか、事前に意識しておくことが大事だと思います。
少なくとも、誰でも死亡届を提出することができるわけではない、ということはポイントとして押さえておきましょう。
わからないことがありましたら、お気軽にご相談ください。
「調べてもよくわからない、、、」
終活や遺産整理、任意後見などは専門的な内容のためわかりにくい点があると思います。
そういった時は一人で悩まずにお気軽にご相談ください。
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