「任意後見」を利用してみようと思うんだけど、いま年金だけしか収入がないんだよな。
ほかに大きな財産があるわけでもないし、利用していけるのか不安だな・・・
こんなお悩みを解決します。
♦本記事の内容
- 任意後見人にかかる費用・報酬を支払えない場合、どうすればいい?
- 途中で報酬が支払えなくなった場合は、任意後見人はいなくなるの?
- 成年後見制度利用促進制度ってどんな制度?
任意後見人にまつわることで、一番気になるのは「お金」のことですよね?
最初に、①任意後見契約書を公正証書で作成してから、
②任意後見契約の発効(任意後見監督人選任の申立て)、
③発効後のサポートから本人が亡くなるまで、
トータルでざっと以下の費用が発生します。
- 契約書作成費用 実費+20万円から
- 後見開始時の申立費用 実費+15万円から
- 任意後見人に払う月額費用 毎月2万円から
- 任意後見監督人に払う月額費用 毎月1万円から
うわ~!契約時だけでなく、毎月の報酬も支払い続けないといけないんだね。
これじゃ、収入が少ない人にとっては、かなりの負担だね。
報酬を払えなければ任意後見は利用できない
結論として、報酬を支払うことができない場合には、任意後見契約を利用することは難しい、と考えておいてください。
任意後見契約は、本人(委任者)と任意後見受任者との間で行われる契約です。
もちろん、親族同士であれば無報酬でやることもあるでしょう。
しかし、専門家などの第三者と任意後見契約をする場合は、報酬額を決めることが多いです。
この場合、本人の側に報酬を支払うだけの経済力がなければ、受任者としても任意後見契約をお断りするケースもあるかと思います。
ほとんどの任意後見契約書を見ると、「本人の破産手続開始」が契約の終了事由となっています。
このことからも、本人に支払能力の有無が求められていることがわかります。
任意後見受任者もボランティアではないので、報酬の見込みがない場合は対応しかねる、ということですね。
結局、本人の判断能力が低下した時点で、「法定後見人の選任の申立て」をするしか道はないでしょう。
そりゃあ任意後見人になってくれる人も、支払能力のない人の面倒なんて、わざわざ引き受けてくれるわけないよね・・・
「任意後見契約の期間中」に報酬を支払えなくなった場合
たとえば、本人(委任者)の体調が急変し、高額の入院費が掛かることになり、任意後見人と監督人に支払うべき毎月の報酬が支払えなくなった場合です。
任意後見人がやる手順としては、
まずは、「任意後見契約は終了」させ、
①「成年後見制度利用促進制度」の活用するために、
②家庭裁判所に法定後見人選任の申立てをする。
本人の収入・資産の有無によっては、
③「生活保護の申請」を法定後見人に行ってもらい財政支援を求める。
こういった流れになるでしょう。
①成年後見制度利用支援事業の申請
各自治体では、成年後見制度の利用拡充を図るため、法定の成年後見人の「申立費用」や「成年後見人に支払う毎月の報酬分」を支援してくれます。
この制度を利用すれば、本人に支払能力がなくても、成年後見制度を利用することができます。
ただし現状だと、報酬や費用の支援は「法定」の成年後見制度のみとなっており、「任意」後見人の報酬には支援をしてもらうことはできないことになっています。
なので、利用支援を受けたいのであれば、任意後見契約は終了させ、法定後見制度への移行を検討した方がよいでしょう。
任意後見は終わってしまうが、法定後見なら報酬を援助してもらえる道があるというわけか・・・
まあ、報酬を支払えない以上、任意後見契約の終了はやむを得ないよな。
ただし、この成年後見制度利用支援事業は、誰でも利用できるというわけではないのです。
一定の条件があります。
助成要件
以下のとおり、いずれかに該当しなければなりません(千葉市の場合)。
- 生活保護を受給している者
- 中国残留邦人等の支援に関する法律により支援給付を受けている者
- 世帯全員が市民税非課税である者
3つ目の「市民税非課税」というのは、単身者だと、
収入が年間150万円以下、
「かつ」
資産が350万円以下
である場合をいいます。
年金受給者でも、給付額が150万円以下であれば、この助成金の申請ができる可能性があるというわけですね。
*千葉市の場合です。各自治体によって、条件は異なります。ご注意ください。
成年後見人となる人が、「親族以外の第三者」であること
親族が成年後見人となる場合は、報酬を請求することはできません。
成年後見人となる人が、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家である場合でなければ、この制度は利用できない、というわけです。
給付額は?
- 成年後見人の「申立てにかかる費用」
- 成年後見人に支払う「毎月の報酬額」
- 本人が在宅で生活している場合→月額28,000円
- 本人が病院や老人ホームなどの施設に入院・入所している場合→月額18,000円
いざという時でも、法定後見人が付いてくれるなら安心だね。
これも、任意後見人がちゃんと「法定後見の申立て」をしてくれるおかげなんだね。
②法定後見人の申立て
任意後見人は、「本人に代わって」家庭裁判所に法定後見の審判の申立てをすることができます。
後見開始の審判が確定したら、ここで任意後見契約は終了、となります。
任意後見人と法定後見人との権限の抵触を避けるためです。
もちろん、任意後見人を「後見人の候補者」として記入することはできます。
無事に、家庭裁判所の審判によって成年後見人が選任されれば、以後はその成年後見人の下で本人の保護が行われることになります。
これからは、私が新たに本人の面倒を見ていきます。
私に支払っていただく報酬は、市町村からの支援金によって賄われる形になります。
③生活保護の申請
本人の経済力が低い場合、成年後見人が本人に代わって生活保護の申請をする、こともありえます。
成年後見制度利用支援事業の助成要件でもある、「生活保護を受給している者」であることを満たすためにも、申請の必要性が生じる場合があります。
これによって、本人の最低限の生活が保障されるというわけですね。
俺がボケて判断能力がなくなってしまった場合、成年後見人が、生活保護の申請をやってくれるのか。それは助かるな。
注意点として、生活保護の申請をすると、所有物や住む場所が制限されたり、本人のプライドが傷つくなどのデメリットもありえます。
生活保護の申請をすれば、それだけで本人のためになるとは限らないこともあるのです。
そこで、生活保護の申請は本人が行うのが原則です。
しかし、認知症などにより、本人に判断能力が欠けている場合など。
このときは、本人以外の者が「本人の同意」を得て生活保護の申請をするのが望ましい、という運用がなされています。
生活保護を受給するとなると、金銭の援助というメリットもありますが、住居制限やお金の使い方などの制限もあり、望まない人もいるんですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
任意後見契約は、基本的には、当事者間の自由な意思に基づく契約、です。
- 「そもそも任意後見契約を結ぶかどうか」
- 「誰に任意後見人になってもらうか」
- 「報酬額をいくらにするか」
- 「どのような内容を代理してもらうか」
報酬を支払えなくなってしまえば、任意後見人としても、後見契約の維持が難しくなることもありえます。
もちろん、報酬がもらえなくても、「本人のために頑張ろう!」と、意欲的に業務を行ってくれる人もいるかもしれません。
「報酬がもらえないのであればムリ」ということであれば、任意後見契約は終了(本人の破産手続など)。
その後、引き続き本人の判断能力に問題があるのであれば、家庭裁判所の審判によって、新たに法定後見人を選定してもらう。
そして、「成年後見制度利用支援事業」や、「生活保護制度」などにより、経済的な支援を受けていく、という方向に進むわけです。
いずれにせよ、契約後に資産が枯渇しないよう、今から十分に資産を確保するよう努めましょう!
わからないことがありましたら、お気軽にご相談ください。
「調べてもよくわからない、、、」
終活や遺産整理、任意後見などは専門的な内容のためわかりにくい点があると思います。
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千葉市で相続・終活窓口を運営している行政書士 菅原正道(すがわら まさみち) が親身になって対応します。
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