【女系家族 山崎豊子】 なぜ遺言書があったのにモメてしまったのか?争続の原因を徹底分析

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相続争いを題材にした作品として代表的な小説。山崎豊子の「女系家族」は、相続に興味のある方にとっては大変おススメの作品です。
作品の詳細は後でじっくり原作を読んでもらえればと思いますが、なぜあそこまでの揉め事が起きてしまったのか?揉め事が起きた原因について、私ならではの見解を述べていきたいと思います。

これから遺言書を書こうと思っている方はぜひ参考にしてみてください。




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原因1 遺言執行者を番頭である大野宇一にしたこと

遺言者である矢島嘉蔵の最大の問題点は、遺言執行者を身内である番頭・大野宇市(以下、宇市)に指定してしまったことです。
宇市は矢島商店の番頭という地位を利用して、店の在庫をごまかして計算したり、遺産である山林を勝手に伐採していたりと、しっかりしているように見えて実は裏のある男。
そんな裏のある宇市を遺言執行者に指定したことで、相続人間に疑心の念を抱かれ相続手続きがスムーズに進みませんでした。

遺言者である矢島喜蔵としては、宇市が信頼できない人物であることを薄々気づいていたのであれば、遺言執行者を中立な立場である専門家に指定しておくべきでした。法律専門職がいれば、いちいち相続人の意見に振り回されることなく粛々と遺産分けができたでしょう。

原因2 遺言書の作成を専門家に相談しなかったこと

この作品で喜蔵が書いた遺言書は2通ありましたが、いずれも自筆証書遺言でした。
娘3人と妾、さらには妾の子という相続候補者がいたわけですが、遺産争いで揉めるであろうことは予想できることでした。そうであれば、争いを未然に防ぐためにも遺言書の内容をどう書けばいいのか、事前に専門家に相談しておくべきだったのではないでしょうか。
莫大な遺産を抱えている喜蔵の立場からすれば、専門家に依頼することは金銭的には問題なかったでしょう。
なぜ自分の判断だけで遺言書を書いてしまったのか、疑問ともどかしさを抱きました。

司法書士・行政書士
司法書士

なんでこんな遺言書にしちゃったのかな~?

まあ小説の世界だから仕方ないんですけどね(笑)

原因3 共同相続財産の分け方を具体的に指定しなかったこと

遺言者である喜蔵は、長女・藤代に貸家となっている不動産を、次女・千寿には矢島商店の土地・建物・商品などのほか暖簾営業権を、三女・株式や動産などを、それぞれ遺贈しました(特定相続財産)。

ところが、他の遺産(山林や銀行預金、投資信託など)については、共同相続財産として相続人全員で協議すべき旨を書いていました。
このような相続人の協議に任せる内容にしてしまったことで、姉妹間の争いが深まることになります。骨とう品や山林の範囲から始まり、相続税の払い方の問題まで、さまざまな言い分がありましたよね?

司法書士・行政書士
司法書士

そもそも「親族会」なんて厄介なものも開く必要もありませんでしたね。

このような相続人間での争いが起こりうる場合、相続人間の協議にゆだねるのではなく、遺産の分け方を全て遺言者の方で指定した方がスムーズに遺産分けができたでしょう。

今回の女系家族の場合であれば喜蔵は、山林や銀行預金、投資信託などの遺産についても誰か特定の者に指定しておけば、姉妹間の争いをせずに済んだかもしれませんね。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

フィクションの中とはいえ、喜蔵の遺言書にはいくつかツッコミどころが満載でした。
遺言書を作成しなければもっと揉めた可能性はありますが、遺言書作成を最初から専門家に依頼していれば紛争を避けることはできたでしょう。
まあ専門家に依頼しなかったからこそ小説のようなドラマが生まれたのでしょうが・・・(笑)

いずれにせよ姉妹間の仲が悪かったり、妾との間に子がいるようなケースでは、遺産争いは生じやすくなります。
自筆証書遺言だけでなく、公正証書遺言を事前に作成しておくことで残された人はだいぶ助かります。
ぜひ今のうちに遺言書のことは専門家に依頼しておきましょう。

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