いちど任意後見契約をしても、その効力が発生するまでは、一定程度の時間がかかるもの。
途中で身体の不調が出たり、不動産を処分したことによって、任意後見契約で定めた内容を変える必要もありうるでしょう。
そうなると、あとになって「任意後見契約の内容を見直した方がいいのでは?」と思うこともあるはずです。
今回は、任意後見契約の変更についてのお話です。
それではいってみましょう!
「変更できるもの」と「変更できないもの」がある
やっぱり、「不動産の管理」は大変そうだから、「預金の管理」だけに変更してくれないかな?
そんな勝手なことは言わないでくださいね(笑)
任意後見契約は、あくまで個人と個人の契約(法人の場合もあり)なので、つい「契約内容の変更はいつでも自由にできるはずだ!」と思いがちですが・・・
任意後見契約は、公証人の下で慎重に行われ、登記までされるものなので、当事者間でカンタンに変更できないものとなっています。
なので、「契約の変更ができるもの」と「変更ができないもの」の2つに分かれてきちゃうんですね。
「契約の変更ができるもの」は、わかりやすく言うと、軽微な内容の変更のこと。
反対に、「契約の変更ができないもの」は、契約の根幹を揺るがすような重要な内容の変更のこと、と考えていいかと思います。
ちなみに、「変更ができない内容」については、もう契約自体を解約して、一から契約をし直すしかありません。
任意後見の変更ができる場合
任意後見の内容の変更ができる場合は、軽微な内容の変更があるとき。
たとえば、従来の代理契約に追加して、新たに他の代理もお願いしたり、報酬額を多少引き上げるようなケースです。
以下、具体的にみていきましょう。
代理内容の追加
はじめは、アパートの管理くらいは自分でできると思ってたんだけど、最近足腰が弱くなってきたんだよねー
やっぱり、株や預金の管理だけでなく、アパートの管理も任意後見人にお願いしたいのよ。
従来の契約に加えて、新たな代理行為を追加する場合は、変更することができます。
この場合、追加した部分についての内容について、新たに契約する形となりますので、公正証書で行う必要があります。
そうなると、「従来の任意後見契約」と、追加した部分についての「新たな任意後見契約」が2つ併存することになります。
追加できるのはいいんだけど、任意後見契約が2つ同時にあるっているのも、なんだかな・・・
それが心理的に嫌ということであれば、従来の任意後見契約はいったん解約して、もう一度、追加する部分も含めて新たに任意後見契約をし直すということもできますよ。
報酬額の変更
月20,000円の報酬で、任意後見契約をしたんだけど、管理しているマンションの近くにショッピングモールができて、入居者が殺到!
思った以上に管理業務が忙しくなってきたので、報酬額をもう少し上げてもらいたいんだよねー
これも絶対にダメというわけではありません。
ケースバイケースですね。
任意後見の発効前(本人の判断能力がある場合)と、任意後見の発効後(判断能力がない場合)とで、対応が異なります。
本人の判断能力がある場合
この場合は、本人と任意後見受任者との間で、報酬額の変更ができます。
ただし、契約は公正証書で行う必要があります。
私文書ではできませんので、ご注意ください。
本人の判断能力がない場合
任意後見契約の中で、報酬の増減についての特別の定めがある場合は、任意後見監督人との間で変更することができます。
たとえば、以下の条項みたいな感じです。
契約者の氏名・住所変更
来週で介護施設に入所することになったよ。住所もそこに移転することにしたわー
どこの市にあるのか、全然知らんけどな(笑)
契約期間中に、本人の住所が転居により変更することは、起こりうることです。
もちろん、本人に限らず、任意後見人(任意後見受任者)や任意後見監督者が婚姻・離婚・転居などにより、氏名や住所変更があることも。
こういったケースでは、忘れずに変更登記をする必要があります。
任意後見契約を公証人役場で締結すると、任意後見の登記は、公証人が行います。
ただし、その後、本人や任意後見人などが住所や氏名を変更した場合に、公証人がその事実を知ることはほぼ不可能でしょうから、住所や氏名の変更登記は、任意後見人(任意後見受任者)が自ら申請する必要があるのです。
任意後見の変更できない場合
任意後見の変更ができない場合とは、契約内容に重大な変更がある場合です。
たとえば、受任者そのものを変更する場合や、代理契約の内容を変える場合などです。
誰が受任者として本人の財産を管理するか、というのは、本人の生活に重要な影響を及ぼしますからね。
受任者の変更
オレ、来月から海外に転勤することになったんだわ。
悪いけど、代わりにオレの弟に後見業務を任せるよ。
誰が受任者となるのかは、本人にとって影響が大きすぎます。
この場合は、いったん任意後見契約を解約して、新たに別な人と任意後見契約をし直した方がいいですね。
本人の判断能力に問題がある場合は、法定後見の申立てをするということも一案でしょう。
代理契約の内容の変更
こないだ契約した代理契約を一部変更したいのよ。
あの家、兄弟仲メッチャ悪いし、遺産分割協議に関することは、俺には荷が重いんだよねー
あと、不動産屋の人ってガラ悪いの多い印象だし、あんま関わりたくないのよ。
いちど本人と結んだ代理契約の変更は、本人の生活に大きな影響を及ぼします。
いったん契約自体を解約して、あらためて新たな契約を作り直す必要があります。
まとめ
任意後見契約は、公証人の関与の下、本人と任意後見受任者との間で、慎重な協議を経た上で行われるものです。
したがって、受任者の変更や、代理契約の内容の変更の場合など、任意後見契約の重要な内容の変更についてはできない、ということになります。
「変更ができない」ということは、これまでの契約にずーっと拘束されてしまう、というわけではありません。
いちど契約したものは解約し、新たな契約をし直す、という方法をとれば済む話なのです。
ただ、契約を再度し直すとなると、費用や時間も掛かってしまいます。
そうならないよう、任意後見契約をする場合は、専門家を交えて慎重に協議を行うことをおススメします。
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