暗号資産の相続手続の流れ  準備しておくべき書類はどんなもの?【行政書士が解説】

デジタル相続

 

宋さん
相談者

暗号資産の相続手続きって、土地や預金の手続きと違うのかな?

何か気を付けないといけないことってあるのかな?

 

♦本記事の内容

  • 暗号資産を相続したときの手続きの流れは?
  • 暗号資産を相続したときに用意すべき書類は?
  • 暗号資産を相続させるときに気をつけるべきことは?

参照⇒【Q&A】暗号資産って相続できるの?

暗号資産を相続したときの手続について

暗号資産を持っている人が亡くなった場合、相続人としてすべき手続の流れは、以下のとおりです。

行政書士
行政書士

日本国内の取引所での、おおまかな流れです。

会社ごとに、多少異なる点はありますので、ご注意ください。

  • ステップ1 WEBの「お問い合わせ」ページから、口座名義人が死亡したことを伝える
  • ステップ2 取引所の窓口から、相続手続に必要な書類の案内がされる
  • ステップ3 必要書類を収集する
  • ステップ4 書類を郵送する
  • ステップ5 払戻し等の手続が完了

コインチェックのホームページでは、相続手続の流れや必要書類が細かく記載されています。

【参照 コインチェックの相続手続の流れ】

ステップ1:「お問い合わせ」フォームから連絡

まずは、相続人の中から代表者(代表相続人)を決めます。

代表相続人は、各暗号資産取引所のホームページにアクセスし、「お問い合わせ」フォームから口座名義人が亡くなった旨を伝えます。

どの取引所のホームページにも「お問い合わせ」フォームのページが設置されています。

行政書士
行政書士

相続手続については、ほとんどの取引所でネット対応となっています。

電話で直接対応してくれるわけではないので、相続人にとっては、必要最小限のITスキルが求められます。

コインチェックのお問い合わせフォーム

画面の一番下の方に「ヘルプセンター/お問い合わせ」に行ける部分があります。

ページがどこにあるかわかりづらい場合は、「検索」ページに行ったあと、「相続」というキーワードを打てば出てくることが多いです。

 

【参照:コインチェックの検索ページ】

取引所の中には、「相続」というキーワードで検索しても出てこない会社もあります。

その場合は、直接「お問い合わせ」フォームから聞いた方が早いです。

DMMビットコインのお問い合わせフォーム

DMMビットコインの問い合わせは、わりと見やすくて、到達しやすいです。

「お客様サポート」をタップします。

画面の下の方に、「相続手続きについて」というボタンがあるので、スムーズに手続に入れます。

相続手続の流れについて、初心者にもわかりやすく記載されているので、あとはその流れに従うだけです。

「お問合せはこちら」のボタンから、入力作業に進みます。

 

お問い合わせフォームには、相続について選択できる欄があるので、あとは「本人の名前」「メールアドレス」などを入力しましょう。

ビットフライヤーのお問い合わせフォーム

ビットフライヤーの窓口も、相続について詳しく説明してくれています。

「FAQ/お問合せ」ページから、相続に関する手続を始めていきます。

「相続」に特化したページが設けられているので、安心して進められます。

 

お問合せ内容の欄に、「相続手続きについて」を選択する部分があるので、必要事項を入力すればいいだけです。

ビットバンクのお問い合わせフォーム

ビットバンクのお問い合わせフォームにも、相続に関する案内があります。

プルダウンの中から「相続等に関するご相談」を選択します。

ステップ2:窓口から必要書類の指示を受ける

「お問い合わせ」フォームから連絡してからしばらく経つと、窓口の方から必要書類の案内や、今後の相続手続の流れについての案内メール、もしくは書類、電話が来ます。

【例:ビットバンクの相続手続の流れ】

  • 誰が相続人になるのか
  • 相続人は何人いるのか
  • 相続人に成年被後見人や未成年者がいるかどうか
  • 遺言書はあるのか
  • 遺言執行者はいるのか
  • 弁護士や司法書士などの専門家が代理人になっているのか

などにより、そろえる書類が異なります。

案内の指示にしたがって、確認すべきことは問い合わせておきましょう。

ステップ3:必要書類を収集する

亡くなった方の戸籍・除籍謄本や、印鑑証明書、身分証明書など、役所回りがメインとなります。

場合によっては、

  • 遺産分割協議書
  • 遺言書
  • 遺言執行者の印鑑証明書
  • 相続放棄受理証明書

なども必要になります。

宋さん

たくさん書類を集めないといけないんだね。

なかなか大変そうだな・・・

 

行政書士菅原
行政書士菅原

相続人になる方が、被相続人の兄弟姉妹の場合、亡くなった方のご両親の戸籍謄本が必要になります。

一人暮らしの方で、身内が兄弟のみだと、戸籍収集だけでも一苦労ですよね。

ステップ4:書類を郵送する

書類が全部そろった段階で、取引所の方に郵送します。

戸籍や住民票、印鑑証明書、遺言書などは、原本のまま送付してください。

取引所によっては、あとで原本が返送される場合があります。

遺言書や遺産分割協議書などのように、原本が一部しかないような書類については、返送してくれますからね。

ステップ5:払戻し手続等の完了

必要書類の確認ができたら、ようやく被相続人の口座は解約されます。

もともと口座に入っていた暗号資産は、現金に転換されたあとに代表相続人の銀行預金口座に移行されるか、もしくは暗号資産のまま移行されることになります。

現金に転換されるケース

コインチェックDMMビットコインだと、代表相続人の銀行口座に現金が入金されます。

現金に転換されないケース

一方、ビットフライヤーだと、暗号資産のまま代表相続人の口座に移管します。日本円への換金はしてくれません。

もちろん、代表相続人自身で、相続したあとに、暗号資産を日本円に換金することはできます。

行政書士
行政書士

暗号資産のまま引き継ぐのか、現金に転換されるのかは、各取引所ごとに異なります。

相続人が用意すべき書類

「遺言書」があるかどうか、「遺産分割協議」をしているか、「遺言執行者が選任」されているか、などによって、必要書類は異なります。

ただ、相続手続において、必要最小限の書類は、以下のとおりです。

  • 各社で発行された指定の「相続届」
  • 亡くなった方(被相続人)の戸籍謄本(除籍謄本)または、法定相続情報一覧図
  • 相続人全員の印鑑証明書(発行後6か月以内のもの)
  • 相続する人の身分証明書

基本的に用意すべき書類は、銀行預金の場合と変わることはありません。

亡くなった方が、本当に亡くなったかどうかを証する書面として、戸籍謄本(除籍謄本)または法定相続情報一覧図。

相続人の身分、そして亡くなった方とのつながりを証する証明書として、印鑑証明書、住民票の写し、身分証明書(免許証、マイナンバー、在留カード)などが必要となります。

宋さん

役所に資料集めに行くだけでも、丸一日つぶれそうな感じだね・・・

相続人が多かったり、後見人や未成年者がいる場合だと、さらに労力がかかるね。

 

行政書士菅原
行政書士菅原

そうですね。相続人の状況によっては、追加で必要な書類が出てきます。

たとえば、相続人のなかに、未成年者がいる場合は、特別代理人の選任審判書が必要となります。

暗号資産の相続で注意しておきたいこと

各取引所の窓口の案内にしたがってもらえれば、思ったほど難しい手間はかからないとは思います。

ただし、以下の点には今のうちから気を付けておきましょう。

  • 海外の取引所に預けた資産だと、複雑な手続になる可能性がある
  • 問い合わせをしただけでは、被相続人の口座のアカウントは停止されない
  • 各取引所によって、必要書類や手続の流れが多少異なる
  • 相続税が掛かってしまう・・・
  • 口座のパスワード・IDなどは生前のうちにメモしておく

海外の取引所に預けた暗号資産の場合、手続が複雑になる

日本にある暗号資産取引所の場合だと、日本語対応なのでメールでのやり取りでも、なんとかやり抜くことができます。

しかし、海外の暗号資産取引所の場合だと、窓口の人と連絡を取り合うだけでも一苦労です・・・

一応、日本語翻訳の機能があるサイトもありますが、それでもカンペキな対応とはいえません。

相続手続に必要な書類も、日本の取引所と異なる場合もあるでしょう。

もし、あなたが大量の暗号資産を海外取引所口座に保有しているのであれば、事前に相続の対処法についても確認しておきましょう。

問い合わせをしたからといって、すぐに口座が凍結されるわけではない

相続人が、相続に関する問い合わせをしたからといって、すぐに暗号資産の口座が凍結されるわけではありません。

相続に関する書類の提出が完了し、被相続人の死亡の事実の確認が取れて、初めて口座の取引が停止されます。

【参照:ビットフライヤーのHPより】

亡くなった方が、自動で積立投資をしていた場合、「銀行口座から、いつの間にか預金が引き落とされていた」というようなことが起きてしまいます。

相続人としては、被相続人の死亡の事実を知ったら、すぐに問い合わせ窓口に連絡して、相続手続の手配を始めましょう。

暗号資産は、相続税の課税対象となる

国家の枠にとらわれないで、世界中で取引される暗号資産。

だからといって、国に全く管理されていないかと言われれば、そうとも限りません。

日本では、資金決済法によって、暗号資産は「準通貨」としてみなされています。

通貨である以上、利益が出たら課税の対象となります。

暗号資産の価値が値上がりした場合には、相続人に莫大な相続税が課されることもありえる・・・

税金は日本円で支払わないといけませんから、相続人としては、税金を払える分の資金を確保しておく必要があるでしょう。

相続人に余計な手間をかけないためにも、パスワードは控えておく

これは、暗号資産を保有している方・その相続人候補者の方、両者が気をつけておきたいことです。

暗号資産取引は、ネットだけで完結してしまうものなので、「被相続人が暗号資産を持っているかどうか」なんて、誰にも知られないままになることもありえます。

なので、暗号資産を保有している方は、以下の事項については、最低限メモに取っておくか、親族などに事前に伝えておきましょう。

  • 自分は暗号資産を〇〇円相当分、保有していること
  • 取引所口座の会社名
  • 取引所のアカウント(メールアドレスとパスワード)
  • ウォレットをお持ちの方は「秘密鍵」

もし相続人がアカウントや秘密鍵のことを知らなければ、大変なことになります。

相続人は、暗号資産自体は相続によって引き継ぐことになりますが、アカウントや秘密鍵がわからないと、そもそも引き継いだ暗号資産を引き出したり、現金化することができません。

それだけではありません!

引き出せない暗号資産に対して、相続税が掛かってしまうのです。

宋さん

暗号資産を持っているだけで、税金だけ取られてしまうとは・・・

これじゃ、相続人としては大迷惑だよな。

行政書士菅原
行政書士菅原

せっかく暗号資産で稼いでも、引き出せなければ、何の価値もありませんよね?

パスワードの管理は、今のうちにしっかりやっておきましょう。

特に、海外の暗号資産取引所に口座をお持ちの方や、メタマスクなどのウォレットで暗号資産を管理している方は、パスワードや秘密鍵の管理に気を付けましょう。

暗号資産は、まだ黎明期の段階にあり、法整備もまだあまり進んでいません。

パスワードや秘密鍵を一つ失念してしまうだけで、取り返しのつかない事態が生じてしまう可能性もあります。

自分が亡くなっても、相続人にちゃんと引き継げるよう、細心の注意を払って暗号資産を管理してください。

まとめ

今回は、暗号資産の相続手続の流れについてご紹介しました。

まずは、各取引所の「お問い合わせ」フォームから連絡をすること。ここが出発点です。

あとは、案内に従って、役所で書類集めに行くのみ。

基本となる書類は、①本人の戸籍謄本(除籍謄本)、②相続人の印鑑証明書、③身分証明書などです。

必要な書類さえわかれば、あとはそれほど難しい手続はいりません。

ただし、注意すべきポイントでもお伝えしたとおり、取引所口座のパスワードや秘密鍵などは、相続人にとって知っておいた方がラクです。

暗号資産は、ネットだけですべて完結してしまうもので、現金や不動産と違って、形として何も残るものがありません。

このような資産の特殊事情も踏まえて、相続対策は事前にしておくことをおススメします。

行政書士
行政書士

国内の金融庁に登録された暗号資産取引所なら、まだ安心できる部分はあります。

しかし、海外の取引所に口座をお持ちの方は、細心の注意を払っておきましょう。

 

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