親(中国人)の所有する中国国内にある不動産(土地&建物)は相続できるの?

国際相続

先日父(享年83)が亡くなったんだけど、父が住んでいたマンションの部屋は私が相続できるのかな?

母はまだ生きているので、そのまま住み続けてほしいな。

それと父が持っていた預金や自動車なんかはどう処理すべきなのかな?

今回のご相談者は、中国国籍を有するCさん(57歳)。

中国から来て留学生として日本に来たのが約20年前。そのまま永住権も取得しました。

最近、中国に住む御父上が亡くなったのですが、中国国内に所有する建物や預貯金、自動車やコレクションなどの動産は、誰が引き継ぐのでしょうか?

結論

中国国籍の方が中国に所有している財産については、遺言がある場合をのぞき、中国の法定相続の規定に則って処理されます。

中国の相続順位・相続割合

中国の相続順位は、以下のとおり(継承法10条)

  • 第1順位 配偶者、子、父母
  • 第2順位 兄弟姉妹、祖父母、外祖父母

日本の民法にある相続順位とは、若干異なりますね。

相続割合についても、日本のように配偶者が多めになるのではありません。
(配偶者3分の2、父母3分の1・配偶者2分の1、A子4分の1、B子4分の1というケース)

配偶者と子、父母が同じ第1順位ということで、相続分が均等でなければなりません(継承法13条1項)。ただし、相続人間で協議をし、全員の同意があれば、相続分を異なる配分で分けることは可能です。

Cさんのケースだと、亡くなった父の配偶者である母と、息子であるCさんとで、平等に相続財産を分け合うのが基本となるでしょう(遺産分割協議)。

仮に、配偶者であるお母さまがすでに亡くなっていた場合は、子であるCさんが単独で相続する。もしくはご兄弟がいるのであれば、兄弟間で平等にわけあうことになるでしょう。

中国国内の不動産について気を付けること

中国では、土地は国家や集団のものであり、個人や法人に所有権は認められていません。

個人が土地を利用するには、許可を得て使用権を取得する必要があります。ただし、居住用の土地の使用権が認められたとしても、期間は最長70年と制限されます。

土地・建物を相続したとしても、使用権を取得してから70年を経過すれば、国に返還しなければならない。更新できたとしても、多額な更新料を支払わなければならない。といった可能性も出てきます。

建物を相続したとしても、今後長期にわたって利用できるかどうかは、まだ未知数なところ。遺産分割協議の際は、この点も抑えておく必要があるでしょう。

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ポイント

中国法では、日本の相続法と異なる点がいくつかあります。

主な2つを紹介します。

扶養義務配慮規定

日本の相続のケースと異なる点として、扶養義務に配慮した規定があります。

  • 「生活に特別困難があり、労働能力を欠く相続人に対しては、遺産分配の際に配慮しなければならない。」(継承法13条2項)
  • 「被相続人に対して主要な扶養義務を尽くし、又は被相続人と共同生活をしていた相続人に対しては、遺産分配の時、多くを分けることができる。」(同条3項)
  • 「扶養能力があり、かつ扶養条件のある相続人が扶養義務を尽くさなかった場合には、遺産分配の時、分配しないか又は少なく分配しなければならない。」(同条4項)。

上記のように、相続人のなかに特別な事情を有する者がいる場合には、法定の相続分に変更が加えられる可能性があるということです。

たとえば、今回のCさんのケースだと、亡くなった御父上に対して長年にわたり扶養義務を果たさなかった場合や、他の相続人となる方が身の回りの世話をして看護していたような場合には、遺産分割の際に承継する財産が少なくなる可能性があります。

遺産管理人の選定

中国では、相続が開始されると遺産管理人の選定が必要となります。

いったん被相続人の財産は遺産管理人に帰属し、債務も含めてすべて清算されます。

まず最初に遺産は債務の弁済に充てられ、残った財産があってはじめて相続人に移転することとなるのです。

まとめ

中国の相続法は、日本の相続法とは異なる点が多々見受けられます。

相続が始まった場合は、まずは相続管理人を選任する必要があります(遺言執行者がいる場合を除く)。日本と違い、いきなり遺産分割協議を行うわけにはいかないのです。

2021年1月1日から中国では民法が改正され、今後の動向にも注目されます。

当事務所では、新たな情報がわかりましたら随時記事を更新していきます。

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